料理代行マイスター協会としては、料理代行サービスが多くの人に利用されるようになり、活性化していくことはとても歓迎です。

ですが、中にはあまり衛生面、安全面のリスクを熟知しておらず、時間内にオーダーがあった献立メニューを作り上げることで頭が一杯で、然るべき対策を取らずにサービスを提供しているケースが思いの外多いことに、この場を借りて警笛を鳴らしておきたいと思います。

ここ最近の傾向として「作り置き」がブームで、忙しい家事を効率的にこなしていくために、まとめて作り置きしておくためのレシピ本が人気で、料理代行サービスの中でも、最もニーズが高いサービスの一つが「作り置きレシピ」の調理代行になっています。

しかしよく考えてみれば、作り置いた後の調理はお客様に一任するというサービスですから、どれくらい日持ちするものなのか、どのようにして冷蔵庫や冷凍庫から出して調理すればよいのかなど、きちんと説明しなければなりません。

どれくらい日持ちするものなのかは、季節や食材、調理方法などによって異なってくるため、明確な線引はなく、ベテランの調理師でも判断に悩むこともあります。正直難しいところなのですが、やはりサービスを提供している責任がありますから、ある程度の知識は身に着けて、食べるときの調理方法も含めて、お客様に案内できるようになる必要があると思います。

そうしたことは本講座で詳しくご案内していますが、本記事では「作り置き」してはいけないであろう食品について、サービス提供者として知っておく必要がありますので、例として主要な食中毒の感染事例とその原因となる食品例をここに挙げておきます。

●セレウス菌
米・小麦・豆・野菜などの農作物・穀物を原料とする食品に潜伏しており、例えばチャーハンやピラフ、パスタ、マカロニ、うどん、焼きそばなどは要注意です。

主な症状
嘔吐型は激しい吐き気・嘔吐など。
下痢型は腹痛・下痢など。
潜伏期間 嘔吐型は30分~6時間。下痢型は8~16時間。

この菌の恐ろしいところは90℃で60分の加熱にも耐える”芽胞”を一度作ってしまうと通常の加熱では死滅しません。冷めた調理済食品中で急激に増殖すると言われています。そのため、”芽胞”ができないように、調理は必要最小量にし、調理後は早めに食べきり、室温で放置せずに残りを保存する場合は速やかに冷蔵庫に保存しましょう。

●ウェルシュ菌
ウェルシュ菌は牛・鶏・魚が保菌していることが多く、菌に汚染された肉類や魚介類を使った煮込み料理、例えばカレーやシチュー、スープなどの大量調理は注意が必要です。

主な症状
水様性の下痢・軽い腹痛。
潜伏期間は6~18時間。

ウェルシュ菌は空気が嫌いな細菌のため、粘性の高い煮込み料理を寸胴鍋で作ると、鍋底の酸素濃度が低くなるためウェルシュ菌が増殖やすく、100℃で6時間の加熱にも耐える”芽胞”を形成すると、通常の加熱では死滅しません。

そうなってしまう前に、調理中はよくかき混ぜ、鍋底にも空気を送りながら加熱しましょう。また調理後は早めに食べきり、室温で放置せずに残りを保存する場合は速やかに粗熱を取って冷蔵庫に保存しましょう。

●黄色ブドウ球菌
黄色ブドウ球菌は、人や動物の傷口をはじめ、手指・鼻・のど・耳・皮ふなどに広く生息しており、健康な人の20~30%が保菌していると言われています。そのため、あらゆる食品が原因となりますが、特におにぎり・弁当・サンドイッチ・ケーキなどの素手で扱う「手づくり食品」は調理する人の”手”を介して食品がに汚染されることが多いです。

主な症状
主な症状は、激しい吐き気・嘔吐・下痢・腹痛など。
潜伏期間 30分~6時間。

黄色ブドウ球菌が食品中で増殖する時、熱・乾燥・胃酸・消化酵素に強い「エンテロトキシン」という毒素をつくります。特に手の傷や手荒れの部分に黄色ブドウ球菌が存在する可能性が高いため、手の状態がよくない時は素手で加熱後の食品には触れず、なるべくお箸やトングを使いましょう。また、おにぎりやサンドイッチを作る時は、”ラップ”や使い捨ての”調理用手袋”を使い、直接素手で触れないようにしましょう。

●サルモネラ
サルモネラは、人をはじめ、牛や豚やにわとりなどの家畜、保菌している犬・猫・カメなどのペットからの感染にも注意が必要です。原因となる主な食品は牛、豚、鶏などの食肉や卵です。

主な症状
吐き気・腹痛(下腹部)・38℃前後の発熱・下痢など。
長期にわたり保菌者となることもあります。
潜伏期間 6~72時間。

生卵(卵がけご飯が多い)が原因のサルモネラによる食中毒で子どもが死亡した事例もあるため、賞味期限を過ぎた卵は生で食べないこと!また、乳幼児や高齢者、妊娠中の女性、免疫機能が低下している方などはしっかり加熱調理しましょう。

ちなみに卵の賞味期限とは「安心して生食できる」期間です。その期限を過ぎた卵は加熱調理してください。ただし保存状態によっては腐敗確認し廃棄した方が安心です。

●腸炎ビブリオ
腸炎ビブリオは、海水や海産の「魚介類」などに生息している細菌です。海産の生鮮魚介類およびその加工品、また調理する過程で”手”をはじめ、まな板・包丁を介して二次汚染された食品で注意が必要です。

主な症状
下痢・腹痛(へその周り)・吐き気・嘔吐・発熱など。
潜伏期間 8~24時間。

4℃以下ではほとんど繁殖しないため、特に夏場で刺身などを買う時は、氷や保冷剤を使って低温を維持して持ち帰りましょう。魚などの魚介類を処理したまな板や包丁は十分に洗浄・消毒してから次の食材を調理しましょう。水の中では生きていけないため、魚介類は新鮮なものでも水でよく洗いましょう。

●腸管出血性大腸菌O157
腸管出血性大腸菌O157は、動物の腸内に生息しており、汚染された食肉やその加工品・飲料水を飲食することで感染します。感染事例の原因食品等と特定あるいは推定されたものは、牛レバー刺し、ハンバーグ、牛タタキ、ローストビーフ、サラダなどで、様々な食品や食材から見つかっています。

主な症状
激しい腹痛と水溶性の下痢、血便の症状。
発熱はあっても多くは一過性です。
潜伏期間は3~8日。

O157による感染症が疑われるときは、必ず医師の診察を受けましょう。感染者および家族は食事前など十分に手を洗い、アルコール消毒を行いましょう。また水洗トイレの取っ手やドアのノブなど、菌で汚染されやすい場所を消毒用アルコールなどで消毒しておきましょう。

これらの食中毒予防の3原則は「つけない!」「増やさない」「やっつける」です。詳しくは本講座でレクチャーしていますが、基本は「手の洗浄・消毒の徹底」、「迅速な調理・提供と低温保存」「加熱処理」などを徹底して行うことです。

特に真夏のこの時期は食中毒の危険性が格段と高くなる時期ですので、最新の注意を払ってサービスに当たるよう心がけてください。衛生管理を軽視してサービスを提供してしまうと、取り返しのつかない事態になりかねません。このことを一人ひとりが自覚の上、サービスを提供するようにしてください。

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